(本投稿は米国時間2022年4月13日付のブログ投稿の日本語抄訳です。内容に齟齬がある場合、原文を正とさせていただきます。)
財務部門のリーダーが対応する必要のある分野の中で、最も複雑なものの 1 つが収益認識です。この状況は過去 10 年以上変わっていません。その一方で、消費者のニーズの変化に応じて革新的で便利な製品やサービスを提供しながら、新しい予測可能な収益源を創出するために、サブスクリプションベースのサービスを導入する企業が増えています。McKinsey & Company の調査によると、米国の消費者は現在、平均 4 つのサブスクリプションを利用しています1。そのため、B2C と B2B の両方の市場においてサブスクリプション エコノミーが驚異的なペースで成長しており、2021 年の 2,240 億ドルから 2022 年の 2,750 億ドルへと、前年比 18.5% の増加が予測されているのも意外なことではありません2。
しかし、サブスクリプションベースのサービスを新たに追加するにつれ企業の収益認識プロセスはいっそう複雑になり、多くの企業が、大規模な事業経営を成功させるために必要な価格設定と請求シナリオの組み込みに苦労しています。こうしたサブスクリプションベースのビジネス モデルならではのニーズへの対応を模索する企業を支援するために、マイクロソフトは、Microsoft Dynamics 365 Finance でサブスクリプション請求機能の一般提供を開始します。サブスクリプション請求は、Dynamics 365 Finance ユーザーに追加費用なしで提供されます。
サブスクリプション請求の新たな手段を提供
サブスクリプションベースのビジネス モデルに移行するうえで最も課題となるのは、多くの場合、適切なテクノロジ ソリューションの導入と、経常収益の複雑さに対応するための業務プロセスの調整です。たとえば、サービスとしての製品 (Product-as-a-service) を提供している場合、単一品目への支払いだけで済むので、消費者にとっては便利になります。しかし、社内的には履行義務や財務実績を管理することが必要になります。通常、企業は複数の収益源の収益認識を行うために、顧客からの支払額を配賦する必要があります。たとえば、ハードウェアの収益と、継続的な関連サービス契約による毎月の経常収益の会計処理を別々に行う必要があります。
サブスクリプション請求は、経常収益の詳細を管理する目的に特化して設計されたもので、「定期契約請求」、「収益配賦」、「収益および経費の繰延」という 3 つの主要な機能を提供します。以下のセクションでは、各機能の概要を紹介すると共に、最高財務責任者 (CFO) がサブスクリプション エコノミーの課題に取り組むうえで、これらの機能がどのように役立つかを説明します。
関連情報: サブスクリプション請求の概要
定期契約請求
複雑なサブスクリプション サービスの収益を適切に会計処理することは、経常収益を正確に把握して、財務コンプライアンスを維持し、成長を加速させるために必要なインサイトをビジネス リーダーに提供するために重要です。サブスクリプション請求に含まれる「定期契約請求」機能は、この課題を企業が克服できるように支援するものです。定期契約請求では、価格設定および請求パラメーター、契約更新、月次締め請求書の作成などをユーザーが高度に制御できます。また、単発、マイルストーン、使用量ベースといった特定の請求要件を処理し、階層型または均一の価格設定戦略を組み込むことができます。最終的には、定期契約請求機能により、見積もりから入金までのプロセスを短縮できます。また、ユーザー エクスペリエンス向上のため、顧客別や品目別の月次締め請求書を簡単に作成できるようにして、契約更新および解約プロセスを簡素化することができます。
収益配賦
前述のように、会計上の目的で収益を複数の収益源に配賦することは、サブスクリプション エコノミー固有の課題の 1 つです。サブスクリプション請求の「収益配賦」機能により、複雑な配賦を自動化できるほか、収益のコンプライアンスを確保するために、複数の品目間の価格設定と収益配賦を処理できます。特に、既定および単体の販売価格と販売方法を品目に割り当てることで、国際財務報告基準 (IFRS) 15 および会計基準コード化体系 (ASC) 606 への準拠を支援します。これにより、単体価格に基づいて収益を配賦する柔軟性と制御性を得ることができます。
収益および経費の繰延
サブスクリプション エコノミーのもう 1 つの課題は、特に収益および経費の繰延に関して、まだ発展段階にある規制へのコンプライアンスを維持することです。企業による収益認識に関する規制が変化する中で、財務チームはスプレッドシートを使用して手作業で数式を作成したり、レポート用のデータを統合したりすることに時間を取られがちです。しかし、サブスクリプション請求の「収益および経費の繰延」機能を使用すれば、米国の一般に認められた会計原則 (GAAP) 標準に合わせて収益および経費の繰延プロセスを自動化できます。また、このソリューションでは、将来の期間への転記や月次締め請求書のスケジュールを堅牢かつわかりやすい方法で作成することができます。
次のステップ
この記事では、サブスクリプション エコノミーの成長と、サブスクリプションベースのビジネス モデルへの移行や新規追加に伴って企業が直面する固有の課題について説明しました。また、CFO がサブスクリプション エコノミーの課題に取り組むうえで、「定期契約請求」、「収益配賦」、「収益および経費の繰延」という 3 つの機能がどのように役立つかを確認しました。
サブスクリプション請求は、Dynamics 365 Finance ユーザーに追加料金なしで提供されます。また、このサービスをさらに充実させるために、最近、複数の機能強化を行いました。Binary Stream Software (英語) との新たなライセンス契約により、複雑な請求 (使用量ベースと階層型モデル) のサポートや、経常収益が発生する企業向けの高度なレポート機能などの高度な機能が、サブスクリプション請求に追加されました。詳細については、先日のウェビナー「サブスクリプション エコノミーで成功する方法 (英語)」をご覧ください。ゲスト講演者である Binary Stream Software の CEO 兼社長 Lak Chahal 氏による講演を視聴できます。
出典:
1-McKinsey & Company、2021 年、「Sign up now: Creating consumer—and business—value with subscriptions (英語)」
2-Juniper Research、2022 年、「What Will the Subscription Economy Deliver in 2022? (英語)」
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