セキュリティとプライバシーに配慮したエンタープライズ対応AI であるMicrosoft Dynamics 365とPower Platform Copilotの仕組みを解説
(本投稿は米国時間2023年5月12日付の ブログ投稿 の日本語抄訳です。内容に齟齬がある場合、原文を正とさせていただきます。)
マイクロソフト ビジネスアプリケーション&プラットフォームグループ 応用AI担当バイスプレジデント PhD
Walter Sun
ここ数ヶ月の間に、自然言語で書かれた簡単なプロンプトから、オリジナルのテキスト応答を生成できるBingの新しいチャット体験のような生成AIとアプリケーションに世界が魅了されてきました。Microsoft Dynamics 365、Viva Sales、Power Platformを含むMicrosoftのビジネスアプリケーション全体にジェネレーティブAIが導入されることで、ビジネスの役割やプロセスにおけるAIとの対話が自然にできるようになります。Copilotにより、Microsoft Dynamics 365とPower Platformは、アイデアやコンテンツを生成する新しい方法と、ビジネス全体の情報にアクセスし整理する方法を提供します。
Dynamics 365 と Power Platform の Copilot 機能の利用を開始する前に、その仕組みやビジネスデータの安全性、その他の重要な考慮すべき点について、疑問が生じるかもしれません。以下のよくある質問に対する回答は、活用を始める組織にとって役立つはずです。
ChatGPTとCopilotはどう違うのですか?
ChatGPTは、OpenAIが膨大なテキストデータセットで学習させた汎用の大規模言語モデル(LLM)で、人間のような会話をして、さまざまなトピックに関する幅広い質問に回答するように設計されています。CopilotもLLMを使用していますが、エンタープライズ対応のAIテクノロジーは、ビジネスプロセス、ビジネスデータ、セキュリティおよびプライバシー要件に合わせて最適化されています。Dynamics 365とMicrosoft Power Platformのユーザーには、Copilotが目の前のタスクとの関連で、アクションと推奨コンテンツを提案します。自然言語生成のためのCopilotがユニークな点がいくつかあります。
- AIが生成する応答は、Dynamics 365内からのメールへの応答、特定の手動プロセスを自動化するローコードアプリケーションの展開、顧客管理システム(CRM)からの顧客セグメントのターゲットリストの作成など、ビジネスデータから得る情報に基づいたコンテキストとの関連性があります。
- Copilotは、GPTのようなLLMと組織のビジネスデータの両方を使用して、より正確で関連性が高く、パーソナライズされた結果を生成します。つまり、ビジネスデータはあなたのテナント内にとどまり、シナリオのコンテキストを改善する為だけに使用され、LLM自体は使用状況からの学習はしていません。システムの仕組みの詳細は以下をご覧ください。
- Microsoft Azure OpenAI Serviceにより、Copilotは、エンタープライズグレードのセキュリティ、コンプライアンス、プライバシーを基盤に一から設計されています。
これらのトピックについて、詳しくはこちらをご覧ください。
Dynamics 365とPower PlatformのCopilotはどのように機能するのでしょうか?
Dynamics 365とPower Platformは、Copilotを使用することで、ビジネスデータに適用されるマイクロソフト独自のテクノロジーと組み合わせた基盤モデルを活かすことができます。
- 検索(BingとMicrosoft Azure Cognitive Searchを使用):Copilotのプロンプトにドメイン固有のコンテキストを取り込み、組織のテナント内のマニュアル、ドキュメント、その他のデータなどのコンテンツから情報を統合する応答を可能にします。現在、Microsoft Power Virtual AgentとDynamics 365 Customer Serviceでは、LLMを呼び出すための前処理として、この検索-拡張生成アプローチを使用しています。
- Dynamics 365、Viva Sales、Microsoft Power PlatformなどのMicrosoftアプリケーションと、Microsoft Dataverseに保存されているビジネスデータ。
- Microsoft Graph:Microsoft Graph APIは、メール、チャット、ドキュメント、ミーティングなどの情報から、顧客のシグナルを追加のコンテキストにします。
Copilotは、Microsoft Dynamics 365 SalesやMicrosoft Power Appsなどのアプリで、ビジネスユーザーからインプットを要求します。次にCopilotは、グラウンディングと呼ばれるアプローチによってプロンプトを前処理し、プロンプトの具体性を向上させることで、特定のタスクに関連し、実行可能な回答を得ることができます。これは、Microsoft GraphとDataverseを呼び出して、ビジネスコンテンツとコンテキストを検索するためにユーザーがアクセス許可に同意し、使用許可を与えたエンタープライズデータにアクセスすることによって行われます。また、ロールベースのアクセスコントロールによって認証されたユーザーに表示されるドキュメントやデータもグラウンディングのスコープを広げます。例えば、福利厚生に関するイントラネットの質問では、従業員のロールに関連する文書に基づいた回答を戻します。
このような情報の検索は、retrieval-augmented generation(RAG)と呼ばれ、CopilotはLLMへの入力として正確なタイプの情報を提供し、このユーザーデータと知識ベースの記事から検索した情報などの他の入力を組み合わせて、プロンプトを改善することができます。Copilotは、LLMからの応答を受け取り、後処理を行います。この後処理には、Microsoft Graphへの追加のグラウンディングを呼び出し、責任あるAIのチェック、セキュリティ、コンプライアンス、プライバシーのレビュー、コマンド生成などが含まれます。
最後に、Copilot は推奨される回答を返し、ループ内のユーザーがレビューして評価できるようにアプリにコマンドを返します。Copilotは、これらの高度なサービスを繰り返し処理し編成することで、ビジネスに関連した正確で安全な結果を生成します。
Copilotは、お客様独自のビジネスデータをどのように活用していますか?AIモデルの学習に使用されますか?
Copilotは、LLMをビジネスデータに接続することで、安全でコンプライアンスに準拠したプライバシーを保護する方法で、ビジネス価値を引き出します。
Copilotは、Microsoft GraphとDataverseにあるコンテンツとコンテキストの両方にリアルタイムでアクセスできます。つまり、文書、メール、カレンダー、チャット、会議、連絡先、その他のビジネスデータなどのビジネスコンテンツに固定された回答を生成し、それらを作業コンテキスト(現在の会議、トピックに関するメールのやり取り、先週のチャット会話)などと組み合わせて、正確で適切、コンテキストに基づいた回答を提供します。ただし、お客様のデータをLLMの学習に使用することはありません。Microsoftのデータプライバシーポリシーに沿った形で、お客様のデータはお客様のものである、と考えています。AIを搭載したLLMは、大規模あっても限られたコーパスのデータで学習されます、Microsoft GraphやMicrosoftサービスを通じてアクセスしたプロンプト、応答、データは、他のお客様が使用するDynamics 365 CopilotおよびPower Platform Copilot機能の学習には使用されません。また、お客様の利用によって基礎モデルが改良されることもありません。つまり、お客様のデータは、お客様が明示的に他のアクセスや使用に同意しない限り、お客様の組織内の許可されたユーザーのみがアクセスします。
Copilotの回答は常に事実に基づいているのでしょうか?
生成AIで作成された回答は、100%事実であることを保証するものではありません。事実に基づいた問い合わせに対する回答を改善し続けていますが、アウトプットを確認する際には、自分で判断する必要があります。Copilotは、あなたが運転席に座ったまま、より多くのことを達成するために役立つドラフトとサマリーを提供するものです。
私たちのチームは、AIの原則に沿って、誤報や偽情報、コンテンツのブロッキング、データの安全性、有害なコンテンツや差別的なコンテンツの宣伝防止などの問題に取り組んでいます。また、AIが生成したコンテンツやアクションの責任ある使用を強化するために、ユーザーエクスペリエンスにおいて、ガイダンスを提供しています。Copilotの使用方法をユーザーに案内し、推奨されるアクションとコンテンツを適切に使用するために、以下を提供しています。
指導的なガイダンスとプロンプト: Copilotを使用する場合、情報の要素は、プロンプトを含む提案されたコンテンツやアクションを責任を持って利用し、使用前に必要に応じて回答を確認および編集する方法、事実やデータおよびテキストの正確性を手動で確認する方法をユーザーに指示します。
引用されたソース: Copilotは、必要に応じて公開ソースを引用している為、参照したWebコンテンツへのリンクを確認することができます。
Copilotは、機密性の高いビジネス情報やデータをどのように保護していますか?
マイクロソフトは、エンタープライズ対応のAIを提供する上で独自の立場にあります。Azure OpenAI Serviceを搭載したCopilotは、責任あるAIとエンタープライズグレードのAzureセキュリティが組み込まれているのが特徴です。
セキュリティ、コンプライアンス、プライバシーに対するマイクロソフトの包括的なアプローチに基づいて構築: Copilotは、Dynamics 365、Viva Sales、Microsoft Power Platform、Microsoft 365などのMicrosoftサービスに統合され、企業の大切なセキュリティ、コンプライアンス、プライバシーのポリシーとプロセスをすべて自動的に継承します。二要素認証、コンプライアンス、プライバシー保護など、Copilotは信頼できるAIソリューションとなっています。
テナント、グループ、個人のデータを保護するように設計: データ漏洩は、お客様にとっての懸念事項です。LLMは、テナントデータやプロンプトについて、トレーニングを受けたり、学習したりすることはありません。テナント内では、当社の実績ある権限モデルにより、Azure製品にあるような安全策とエンタープライズグレードのセキュリティが提供されます。また、個人レベルでは、Copilotは、お客様のデータを保護するために長年使用してきた技術を活用して、アクセス可能なデータのみを表示します。
新しいスキルを学ぶために設計: Copilotの基礎スキルは、生産性とビジネスプロセスのゲームチェンジャーになるものです。この機能により、特定のビジネスコンテンツとコンテキストを使用して、作成、要約、分析、コラボレーション、自動化を行うことができます。しかし、それだけにはとどまりません。Copilotは、ユーザーに対してアクションを推奨します(例えば、従業員が時間と経費のレポートを提出できるように、勤務時間と経費のアプリケーションを作成します)。そして、Copilotは新しいスキルを学習できるように設計されています。例えば、Viva Salesでは、CopilotがCRMシステムに接続し、顧客データ(対話履歴や注文履歴など)をコミュニケーションに取り込む方法を学習できます。Copilotが新しい領域やプロセスを学習することで、さらに高度なタスクやクエリーを実行できるようになります。
Copilotは、規制当局のコンプライアンス義務化の要件を満たしていますか?
CopilotはAzureのエコシステム内で提供されており、当社のコンプライアンスはAzureのコンプライアンスに準拠しています。さらに、Copilotは、当社の文書化された原則に記載され、以下に要約されている責任あるAIへの取り組みを遵守しています。AI分野の規制が進化する中、マイクロソフトはこの分野における将来の規制要件を満たすための適応と対応を続けていきます。
マイクロソフトのビジネスアプリケーションを横断する次世代AI
次世代AIでは、ビジネスの役割やプロセスとAIとの対話がより自然にできるようになります。
責任あるAIの取り組み
マイクロソフトは、責任あるAIを作ることに取り組んでいます。私たちの活動は、公平性、信頼性と安全性、プライバシーとセキュリティ、包括性、透明性、説明責任というコアとなる一連の原則によって導かれています。お客様がAI製品を責任を持って使用し、学びを共有し、信頼に基づくパートナーシップを構築できるよう支援します。これらの新しいサービスでは、AIプラットフォームサービスの使用目的、機能、制限に関する情報をお客様に提供し、責任ある展開の選択を行う為に必要な知識を得られるようにしています。
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