いまだ多くの企業において、顧客サポート担当者が、受け付けた問い合わせ毎に解決策を調査し作文する「車輪の再発明」型の顧客サービスが見られます。明確で標準化された解決策が最小限の操作で使用できる状態にない場合、従業員は業務の遂行にあたって貴重な時間 (および経費) を浪費し、その間に顧客ロイヤルティを失うことになります。
マイクロソフトで Parature の担当シニア製品マーケティング マネージャーを務める Tricia Morris はこの状況を変える必要があると考えます。貴社も今年この変革を起こせるかもしれません。Morris は『すぐに実践! 顧客サポート 10 の注目トレンド』でナレッジを注目トレンドのトップに挙げ、「(社内外の) ナレッジの可用性とアクセシビリティが、2016 年以降のお客様サービスの向上に重要な影響を及ぼす」と述べています。
ナレッジ管理とは何か?
ナレッジ管理とは、企業内の情報やリソースを効率的に取り扱うためのプロセスです。Gartner の定義 (英語) によると、真のナレッジ管理とは「人々が持つ潜在的なナレッジを含む情報資産の作成、取得、整理や、それへのアクセス、また、使用するための共同作業に向けた統合的なアプローチ」です。
これはすばらしい取り組みのように思えます。しかし、米国内の 98% の消費者 (英語) が優れたカスタマー エクスペリエンスにとって「満足な答えを得られること」や「豊富な知識を持つ担当者の対応を受けること」を重要な前提条件であると考えているのに対し、エージェント向けのナレッジ管理ソリューションを提供している企業は半数にも満たないのです。ここに大きな落差があります。
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ナレッジの重要性
一般的なナレッジ ワーカーは、1 日の勤務時間の 36% を情報の検索 (英語) に費やしていますが、業務で必要な情報を得られる確率は約 56% に留まっています。もし情報を探す時間が半分になったら、または必要な情報が 2 回に 1 回ではなく毎回得られたら、効率はどれほど向上するでしょうか。
適切な情報へのアクセスが必要なのは、従業員のみではありません。消費者も、セルフ サポート (自己解決) ポータルや FAQ によって、インターネット接続さえできれば時と場所を選ばずすぐに必要な答えを得ることができます。これはどのような場合にでも重要ですが、特に顧客が不満を感じたりいら立ったりしている場合、適切な答えにすぐにアクセスできると全般的なエクスペリエンスが大幅に向上します。
顧客は迅速な対応を切に求めています。2014 年の Economist 誌調査部門のレポート (英語) では、世界中の 2,000 人以上の顧客に調査を行った結果、理想的なカスタマー エクスペリエンスに求められる最も重要な項目として「問い合わせや不満に対する応答が速い」が挙げられました。
Morris は「サポート エージェントが問題に対する回答や必要な情報を迅速に提供できなければ、顧客満足度と初回解決率は低くならざるを得ません。ここで引き続きカギとなるのは、『迅速に』という点です。」と述べています。
こういった問題の一因として、企業がナレッジを一元管理していないということが挙げられます。従業員の 60% は、情報を検索する際に 4 つ以上のシステムを検索しています (英語)。ナレッジに簡単にアクセスできなければ、ナレッジがないのと同じなのです。
ナレッジ管理の改善で顧客サービスを向上
正確なナレッジに迅速にアクセスできることは、顧客満足度の向上をもたらすだけではありません。デジタル ナレッジ システムは運用コストの削減にもつながります。ドキュメントはペーパーレスで随時更新が可能なので、企業にとっては、製品、問題、そして解決策に関する最新情報の提供が容易になります。
多くの従業員やユーザーが、必要な情報を得るために特定のトピックについて検索しているということはありませんか。企業は、高度なナレッジ管理システムを使用することで、従業員のスキルの差、サポート マニュアルやその他のセルフ サポートの情報の欠落などを把握することができます。このデータの活用によって、従業員向けのトレーニングやセルフ サポート マテリアルの内容を見直すことができるため、ユーザーのニーズにより適切に対応することができます。
また、優れたナレッジ管理ソリューションがあれば、たとえ社外からでも適切な答えやリソースを収集することができます。Microsoft Dynamics CRM 2016 では、顧客からのフィードバックや問題を迅速にナレッジ ベースの記事にすることができます。インタラクティブなサービス ハブによるナレッジ ベースの記事のコンテンツ作成や更新が可能であるため、だれもが同時に情報を共有できるようになります。
Morris は、基本的ことから始めるべきだという考えを示しています。「多くの企業や企業ブランドが、基本を理解する前に、パーソナライゼーションやカスタマイズされたジャーニー マップといったものに飛びついて、巨額の投資を行っています。これは砂の上に家を建てるようなものです。充実したサービス基盤がなければ、美しい玄関ドアも顧客の好みの色で塗られた玄関ホールも、長期にわたって顧客との関係を維持する要因にはなりません。」
今日はモノのインターネット (IoT) がトレンドとなっています。IoT とナレッジ管理の関係については、次のホワイトペーパーをお読みください。
オムニチャネル エクスペリエンスにおけるナレッジ管理に必要な3つの要素
- すべてのチャネルで一貫したナレッジを提供
自社 Web サイト、ソーシャル メディア、仮想エージェント、メール対応などすべてのチャネルで、同一のナレッジ ベースから一貫した顧客サービス コンテンツを提供しましょう。 - 従業員に必要な情報を提供
顧客に向けたナレッジ ベースは顧客だけのものではありません。従業員やエージェントもセルフ サポート ポータルに接続されている社内のナレッジ ベースにアクセスできるようにして、一貫した最新の回答や情報を初回対応時に提供できるようにしましょう。 - 常にコンテンツを改善
フィードバックやレポート ツールで、有効なコンテンツと改善を要するコンテンツを把握することができます。情報の追加や更新を継続的に行うことは、顧客のセルフ サポートのエクスペリエンスを向上させ、電話やメールの問い合わせを減らし、顧客対応担当者の効率を上げることにつながります。
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このブログ記事は、2016年3月10日に米国のブログで公開された Knowledge Management in an Omni-channel World の抄訳です。
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