Power Platform の SAP 統合強化の発表
(本投稿は米国時間2022年9月20日付のブログ投稿の日本語抄訳です。内容に齟齬がある場合、原文を正とさせていただきます。)
Clear Software 買収により、マイクロソフトは、Power Apps、Power Automate、Logic Apps で SAP を実行している組織向けに、Power Platform の大規模な導入を実現する新機能を提供できるようになりました。
2021 年 10 月、マイクロソフトは Clear Software を買収 (英語) し、SAP や Oracle E-Business Suite などの複雑な記録システムへの接続を強化しました。以降、Clear Software から Power Platform の複数の領域へ、機能の移行を推し進めてきました。
このたび、Power Platform の広範な新機能のパブリック プレビューを発表しました。これにより、SAP を実行している組織では、ビジネス プロセスのデジタル トランスフォーメーションと自動化を簡単に行えるようになります。
一般的な SAP プロセス向けの事前構築済み Power Apps
今回のパブリック プレビューの発表で最も注目されるのは、Order to Cash と Procure to Pay というビジネス プロセス向け事前構築済み Power Apps を提供する、「SAP 統合」と呼ばれるダウンロード可能な (英語) ソリューションです。一部のお客様を対象としたプライベート プレビュー中に大きな反響があったとおり、これらのアプリは画期的で、投資から価値を引き出すことが根本的に容易になります。
パブリック プレビューでは、非常に単調なタスクである販売注文入力と発注書入力の 2 つに注目し、関連するすべての画面とデータ属性を Power Apps の単一のシンプルな画面にまとめて効率化を図りました。これらのアプリでは、ビジネス ユーザーが Power Automate のビジネス ルールを自動化することでデータの精度を高めながら、タスクをはるかに短時間で完了できるようになります。
何より、Power Apps は完全に構成可能であるため、お客様はテンプレートを簡単に編集して、自社固有のニーズに対応することができます。
一般提供開始に向けては、SAP 統合ソリューションを拡張し、以下に挙げる SAP の一般的な 25 のビジネス プロセス向けの Power Apps を含める予定です。
- Order to Cash – 顧客、見積もり、販売注文、配送、顧客請求書、顧客支払、価格の一括変更
- Procure to Pay – 仕入先、在庫要求、発注書、商品受領、仕入先請求書、仕入先支払
- Record to Report – 財務転記、GL 勘定、コスト センター、プロフィット センター、入金消込、仕訳入力の一括アップロード
- Make to Stock/Make to Order (MRP) – 製造/プロセス オーダー、材料、物流、設備、作業指示、出荷
以下は、Power App 発注書テンプレートの例です。ユーザーはここで SAP 発注書を検索、表示、作成、変更できます。
一般的な SAP プロセス向けの事前構築済み Power Automate フロー
25 の SAP Power Apps をサポートするために、対応する Power Automate フローも SAP 統合ソリューションで事前構築されます。これらのフローは、SAP からリリースされた API を利用し、組織の SAP 環境や SAP のバージョンにかかわらず動作します。このことは、以下の理由から大きなメリットをもたらします。
- 価値実現の迅速化 – フローが動作するように、お客様が API の調査とテストに何か月も費やす必要がなくなります。これらのフローは、お客様の SAP サーバーにインストールすることなく、そのまま使用できます。
- 技術的負債がない – SAP でカスタム コードを避けることによって、将来的にスムーズなアップグレードが可能になり、技術的負債を抑えられます。
- 持続可能性 – SAP の公開済み API は、数十年にわたってサポートされています。SAP が コア API のサポートを継続する限り、これらのフローは動作し続けます。
パブリック プレビューでは、約 20 の Power Automate フローを提供し、Order to Cash と Procure to Pay のビジネス プロセスに対応します。一般提供開始前に、サポートするフローの数を増やして以下の領域に対応する予定です。
- Order to Cash
- Procure to Pay
- Record to Report
- Make to Stock/Make to Order (MRP)
以下は、SAP で発注書を承認するための事前構築済みのフローの例です。
高度な SAP システム接続
SAP を実行しているお客様からよく寄せられるフィードバックに、ユーザー セッション、特に、数千人のユーザー間の負荷分散をサポートするメッセージ サーバーの高度な接続パラメーターの一部を使用できない、というものがありました。今回、メッセージ サーバー、ゲートウェイ サーバー、さらに高度な SSO 構成をサポートするために、こちらの一覧にある接続パラメーターをご利用いただけるようにしました。
パブリック プレビューでは、ソリューション内の JSON の環境変数を通じてご利用いただけます。
これらの接続パラメーターは、新しい SAP コネクタを使用してフロー内で簡単に参照できます。
一般提供に先立ち、これらの JSON の環境変数に加えて、簡素化されたユーザー インターフェイスを提供します。これにより、システム管理者が高度な接続を維持しやすくなります。
新しいオンプレミス データ ゲートウェイ
また、オンプレミス データ ゲートウェイの新バージョンもリリースし、以下の 2 つの要件に対応します。
- 下位互換性 – 新しい SAP コネクタの提供を開始したため、旧バージョンの SAP コネクタを実行している既存のお客様が引き続きフローを実行できるようにする必要があります。
- SSO の強化 – お客様から多く寄せられているもう 1 つのフィードバックは、SAP で SSO を設定、実行するのが非常に難しいというものです。新たなゲートウェイでは、Kerberos 委任などの高度な機能を追加し、SSO が Power Apps、Power Automate、SAP の間でシームレスなエクスペリエンスとなるようにします。
新しい SAP コネクタとアクション
このパブリック プレビューの発表前、Power Automate には、SAP から複雑な API が選択された場合に、スキーマの取得後にパラメーターを表示できないという既知の問題がありました。さらに、スキーマの取得後に SAP API を使用するのが難しいと訴えるお客様が多くいらっしゃいました。
こうしたことから今回、以下の機能強化を行った Power Automate の新しい SAP コネクタとアクションを発表しました。
- フロー作成者が、システムの詳細 (IP アドレス、クライアント ID、システム番号など) を知らなくても、ドロップダウンから高度な SAP システム接続を選択できる
- SAP API を選択すると、必要なパラメーターのみが返され、フロー作成者が必要に応じて追加のオプション パラメーターを指定できる
- 高度なシステム接続内の SSO とデータ ゲートウェイ パラメーターを非表示にし、アクションに必要なデータ要素の数を削減
以下は、新しい SAP コネクタを利用する新しいアクションのスクリーンショットです。
複雑な SAP API を使用した場合の皆様からのフィードバックに基づいて、この作成者エクスペリエンスをさらに簡素化する予定です。
新しい Logic Apps 関数
Power Automate の式言語は Logic Apps 関数に基づいています。SAP データの処理をさらに効率化するために、新たな関数を追加しました。
- isInt – データ属性が整数の場合に True を返します。これにより、フロー作成者は、SAP API に送信する前に先行ゼロを SAP データに追加すべきかどうかを判断したり、SAP からレコードを取得した後に SAP データから削除したりすることができます。
- chunk – テキスト領域、長い文字列、ファイル コンテンツを、SAP の API 向けの固定長文字列の配列に分割します。
- sort – 各オブジェクトに含まれるキーで、オブジェクトの配列を並べ替えます。
- reverse – 各オブジェクトに含まれるキーで、オブジェクトの配列を逆順に並べ替えます。
- dateDifference – 2 つの日付の間隔を求め、この関数で指定された時間単位で返します。これは、時間ベースの請求を使用しているお客様に特に有用です。
- isFloat – 一部の SAP API がユーザーのローカライズされた形式で通貨文字列を返すというユニークなエッジ ケースがあり、これにより数学演算に問題が生じます。この関数を float() と組み合わせると、演算を正しく行えるように書式を削除します。
- parseDateTime – タイムスタンプの文字列表現を標準の ISO 8601 形式に変換します。この関数のこの出力は、日付と時刻関数で定義される関数のように、タイムスタンプでの追加の操作に確実に使用できます。
- formatDateTime – 新しいオプション パラメーターのロケールが既存の formatDateTime に追加されました。これを指定しない場合は、既定のロケールが使用されます。
- nthIndexOf – 部分文字列の n 番目の出現箇所を見つけることができます。
- slice – 部分文字列を抽出する新しい方法を提供します。既存の関数の部分文字列では、開始インデックスと長さを指定することで、このようなことが既に可能です。
以下は、SAP 材料 ID が数値であるか英数字であるかを確認している Power Automate フローの例です。数値の場合、この式は SAP の API が想定する先行ゼロの含まれた SAP 材料 ID の形式になります。
詳細情報
パブリック プレビューに関するドキュメントには、こちら (https://aka.ms/learn-sap-integration) からアクセスできます。ソリューションの概要と、チームとシステムにおける Power Platform と SAP の統合準備に関するガイダンスを提供しています。オンライン ドキュメントやトレーニングは、ソリューションの進化に合わせて拡充していきます。
まとめ
今回の機能強化は、お客様からいただいたフィードバックを直接反映したものです。このリリースによって、皆様が SAP と Power Platform への投資からより多くの価値を得られるようになることを願っています。パブリック プレビュー期間中もフィードバックをお待ちしています。Power Automate フォーラム (https://aka.ms/sap-powerusers-community (英語)) にアクセスして、お気軽にコメントをお寄せください。

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